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2019/06/04 18:41

子犬さえ鼻水を垂らしてしまうような煙害に加え、40度を超える激烈な暑さ。風も暑く、熱に肌が膨満する不快さならば、黒い服で外へ出ようものなら大気の中で行き場を持て余している暑気が、わっと体に襲いかかってくれば、庭の小さな草木も日に日に萎れる、今年は本当に大変な暑季でした。

そんな逃れる場もない酷暑の中、会社ではスタッフたちが早朝のまだかすかに涼しさが感じられる庭で、この限られた時を逃してなるかと連日ジャスミンの花と格闘していました。
私たちの会社では自然素材だけが原料のバームを作っていますが、暑季は特別なバームを作るための貴重な時期。それはジャスミンの生花でバームに香りづけをするためです。


ジャスミンの花の香り成分は気難しく、溶剤で抽出したものは重厚な香りになりすぎ、合成の香料も甘みが強くなりすぎ、それらに私はジャスミンの花が苦手になっていたのですが、タイへ来て誰もが身近に愛しているジャスミンの本当の香りの清楚な涼しさにすっかり驚き、その玉のような花とともに大好きになってしまいました。

にも関わらず、生花以外のジャスミンの香りは、やはりあの人工的な香りです。
せっかく、ジャスミンの国にいるのになんと残念!と、私たちは、生花を油脂の上に乗せて直接香りを移すという、中世ヨーロッパで始まり、合成香料の発達とともに廃れてしまった方法を復活させ、本物の花の香りがするバームを作り始めたのでした。

廃れたといっても、花を油脂に乗せるなんてずいぶん簡単ではないかと思われるかもしれませんが、摘んだ花の選別ほか細かな神経を使う過程は数多く、それも花の鮮度が良いうちに終えなくてはならず、人手も手間もかかります。
何より摘みたての花をなるべく早く作業場へ運ばなくてはならないので、できる場所も限られます。
この沢山の条件ゆえに手軽な合成香料が選ばれるようになったことに得心しつつ、チェンマイの郊外で古い方法を再現したのは、私たちの小さな誇りです。

この方法を再現するために会社の敷地内に無農薬でジャスミン畑を拓いたのが10年前。
原料に足りる量が咲くようになって3年目。そしてスタッフたちも納得できる花が咲くようになった今年。
ジャスミン農家の方に教えを乞いながら、自分たちで土を良くし、株を大きくし、花を咲かせる時を重ね、また空模様に一喜一憂するのは、化粧品であっても人が何から生じるものによって生きているかを、思い知らされる日々でもありました。

酷暑と水不足の中、細やかな洞察力と粘り強い世話で見事な株を育て花を咲かせたスタッフたちに感服しつつ、土から自然から決して離れられない生き物なのに、人間がこれまで自らが来た場所を省みなかったことにも、切なさや恥ずかしさを今年のチェンマイの暑季に感じ、仕事中、窓から風に運ばれてくるジャスミンの香りは胸に刺さります。
そして稲垣足穂の「地上とは思い出ならずや」、九鬼周造の「(自分たちは)みな無の深淵の上に壊れやすい仮小屋を建てて住んでいる人間たちなのだと感じた。」という言葉が思い出されます。
人は地上に間借りしている存在。緑豊かなタイでは、植物の狭間に人は埋もれているよう。ならばもっと植物や小さな生物たちに寄り添うように生きる術はないものかと思わすにはおれません。

雨が降り始めました。
雨にぬれた花は原料にはできないので、今年のバーム作りはおしまいです。
けれどなお、まだ瑞々しく白玉のような満開のジャスミン畑です。今度は、スタッフたちと髪に飾ったりポケットに忍ばせたり、お茶に浮かべたり、あるいは小さな花瓶に生けたり、清涼さを呼んでくれる香りの恩恵をそっと楽しもうと思っています。(Hanaoka Asae)